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カーボンプライシングについて
1.カーボンプライシングとは
- カーボンプライシングとは
- カーボンプライシングとはCO2に価格付けすることによって、CO2を削減する仕組み
- 主に「A:排出権取引」(他の排出者と取引)と「B:炭素税」(排出量に応じた課税)のことを指す
- カーボンプライシングの目的
- 市民や企業が、CO2排出のより少ない行動を合理的に選ぶことを推進するため
- A:排出権取引について
- 「排出権取引」 (別名:キャップ・アンド・トレード)
- 個別の企業や国に対して割り当てられた温室効果ガスの排出枠(排出を許される量、キャップ)超えそうな企業や事業所が、排出枠が残る別の企業・事業所から排出枠の取引(トレード)を行うこと
- 世界の現状(参照:WWF)
- アメリカ
- 2007〜2010年の間に、国全体を対象とした排出量取引制度に関する議論が盛り上がり、一時期は、導入は時間の問題であるとまで言われたが、議会において法案が通らなかったため、導入に至らず。他方で、州政府のレベルでは、いくつかの州が実際に排出量取引制度を導入し、現在9つの州で導入済。
- EU
- 2005年開始。経済危機の影響や制度そのものの不備などから、目標とする削減量に対し排出枠が余ってしまうなどの問題が発生。その結果、排出権取引制度による十分な温室効果ガス削減効果を得られなかったとして批判を浴びる結果となったが、少しずつ改善策がとられている
- ニュージーランド
- 2008年開始。2030年に向けた「炭素予算」(CO2排出の限度量を予算のような扱う仕組みのこと)を定めており、その達成の手段としても、排出量取引制度は活用される予定
- 中国
- 2021年7月、全土で「世界最大」の排出権取引が開始。発電事業者が対象(参照)
- 日本の現状
- 導入実績なし
- 東京都など限られた地域での導入実績はあり
- 対象事業者
- 指定地球温暖化対策事業所(オフィスビル、地域冷暖房施設、工場等)
- B:炭素税について
- 「炭素税」
- 温室効果ガス排出量に応じた課税のこと
- 世界の現状
- アメリカ
- 導入なし
- EU
- 日本の現状
- 地球温暖化対策税(温対税)と呼ばれる炭素税が導入されているが、税率が低く行動抑制効果は低い。以下表では丸がついているが、実質的には炭素税は未導入
- 参考:インターナルカーボンプライシング(ICP)について
- インターナルプライシングとは
- 炭素投資の推進等を目的として、各企業が社内で独自の炭素価格を設定する取組
- 世界で 2,000 社超、日本でも幅広い業種にわたり 250 社超が導入(マイクロソフトは15ドル/tで導入済)
- 導入目的
- 1/CO2排出リスク見える化
- 2/排出リスクを意思決定・評価に反映
- 3/内部課金・取引
- その他
- 10月改訂のTCFDガイダンスで、開示が推奨される7指標の1つとして社内炭素価格を採用
- 以下日本のICP導入企業
- カーボンプライシング全般の政府内議論(2021年9月時点):環境省「カーボンプライシングの活用に関する小委員会」の中間整理
- 排出権取引
- 慎重論が多数。炭素税のほうが早期実現の動き。少なくとも取引市場が先というコメントはなし
- 炭素税
- 慎重論が多数。また有識者のコメントでもどの段階に課税すべきかは、定まっていない
- (上流派閥、、最終消費者への負担、などコメントが多様)
- インターナル・カーボンプライシング
- 「ICPは企業独自の取り組みのため、国の議論に上がることは違和感がある」とのコメントあり
- 2021年9月〜2021年12月までのアップデート
- 「炭素税」22年度は見送り 重要課題に位置付け―税制改正
- 11/14にEUが国境炭素税を発表
- 欧州連合(EU)が、温暖化対策の足りない国・地域からの輸入品に対して課税する「国境炭素税」を2026年にも導入すると発表(対象製品にはセメント、鉄・鉄鋼、アルミニウム、肥料、電力)
2.得られた示唆
- カーボンプライシングについて、国の議論は進んでいるものの、具体的な事項は何も決まっていない
- 日本としては、炭素税の方が先に導入になりそう
- 一方、状況は日々変化しているため、常にニュースは確認しておいたほうがよい
- 2021年11月にEUが発表した国境炭素税についても、注意が必要
- 現在は課税対象品目が限定されているが、今後拡大の可能性あり
3.補足
- [個別の企業や国に対して割り当てられた温室効果ガスの排出枠]の具体的な中身をどこかでしることができるのか?
- まず排出権取引制度(キャップ・アンド・トレード)の流れは以下の通り
- 1/CO2削減量の決定と排出枠の発行
- 2/各企業への排出枠の分配
- 3/排出枠の取引
- 2の排出枠の分配には以下の3つの方法があります
- ①オークション方式(カリフォルニア)
- 各企業・事業所が排出枠をオークション(入札)によって購入する方法。グランドファザリング方式やベンチマーク方式が無償で排出枠を分配するのに対し、オークション方式だけが有償での分配
- ②グランドファザリング方式
- グランドファザリング方式は、企業や事業所における過去のCO2排出量を基準として、無償で排出枠を分配する方法
- ③ベンチマーク方式(EU・中国・カナダ)
- ベンチマーク方式は、その企業・事業所の生産物や技術に着目し決定される「理想的な標準の排出量」をもとに、排出枠を分配する方法
- 参照:海外の炭素税・排出量取引事例と我が国への示唆
- 実際の排出枠(大体「基準年より◯%削減」にて総量が確定し、その後各企業に分配されるようです。以下は10年ほど前のデータですが参考)
- 【EU】
- 2020年に制度対象部門の排出量が2005年比21%となるよう、2013年以降、毎年1.74%ずつ排出枠の総量は減尐させる。必要に応じ2025年までに見直し。
- 【米国】
- 2005年比で、2013年に4.75削減%、2020年に17%削減、2030年に42%削減、2050年に83%削減することを明記。2050年に至る各年での割当総量を定めている。
- 【東京都】
- 2020年に2000年比25%削減するとの目標の達成に向けた、2020年度の業務・産業部門の削減目標を、2000年度と比べて17%削減する水準に設定
- インターナルカーボンプライシングで内部課金されたお金はどこにいくの?企業がわざわざ自主的に課金するメリットは?税制メリットを得られる?
- 活用方法は企業による。以下参考事例
- (1)Microsoft
- Microsoft社では、二酸化炭素1トン当たり1,575円のインターナルカーボンプライシングを設定。各部門の二酸化炭素排出量を割り出し、排出量に応じた資金を収集しています。集められた資金は低炭素投資の促進に使用
- (2)アステラス製薬
- アステラス製薬では、二酸化炭素1トン当たり100,000円のインターナルカーボンプライシングを設定。このインターナルカーボンプライシングはアステラス製薬が投資する際の判断基準として使用。もし、二酸化炭素削減のコストが100,000円を下回る場合、投資判断が実施に大きく傾きます。しかし、100,000円を上回る場合は、投資を見送る判断材料となる。もちろん、これだけが投資判断の基準ではありませんが、インターナルカーボンプライシングの価格が投資判断に影響を及ぼすことは確か
- 出典:環境省『Strategy』(p42)(2020/3)
- そもそもの炭素税の課税額っていくらくらい?
- 課税額は国により異なる。CO2排出1トンに対して◯円と決められている。例えばスウェーデンだと1トン当たり137ドルだが、英国では25ドル。日本の温対税だと3ドル。
- カーボンプライシングとはCO2に価格付けすることによって、CO2を削減する仕組み 。これにより、市民や企業の方々に、CO2排出のより少ない行動を合理的に選んでもらうことを推進。
- 主に「排出権取引」(他の排出者と取引)と「炭素税」(排出量に応じた課税)
- IMF想定(10-40米ドル/tco2)、個人3万円/年くらいのインパクト
- 2024年度の炭素税導入は見送りに